【広島電鉄株式会社会社概要】
それではまず広島電鉄の概要をご説明させていただきます。
(カンパニー制になったのは?)
創立は明治43年、電車開業は大正元年でございます。今年の十一月で八十七年目に入ります。主な事業としましては、鉄道事業、軌道事業、乗合・貸切自動車事業、不動産事業、資本金9億円。先ほど長山先生からもご紹介いただきましたが、カンパニー制になったという話ですけれども、4つのカンパニー、1つには電車カンパニー、2つ目がバスカンパニー、3つ目が不動産カンパニー、4つ目がMSカンパニーといいましてマネジメントサポートカンパニーという労務、経理、人事とかいった後方支援部隊のところを総称してサポートしてくれる会社ということでマネジメントサポート、MSカンパニーということにしております。
(運輸省の方で規制緩和の動き)
なぜカンパニー制にしましたかと言いますと、昨年5月6日に改組したわけですが、現在運輸省のほうで規制緩和の動きがずいぶんあります、その規制緩和のなかでバス事業、タクシー事業、鉄道事業、航空事業、いろんな運輸事業を自由競争にして、事業に自由参入できるようにしよう、そして自由に撤退もできるようにしよう、という風な規制緩和になります。
その中で今まではそういう需要と供給を運輸省の規則によって一定の枠をもっていたわけです。例えば枚方市の中でもタクシー会社が3社ある、そのなかで新しくやりたいと言ってもこれ以上増えると、その3社がだんだん水揚げも少なくなって経営が難しくなるからそれはだめだという、いわゆる保護の規制をしておった。ところがこんどは経営が苦しいからやめたいと言っても、今やめたのではみんなが困るからもうすこしがんばれというふうなことで、自由参入、自由退出というのが認められてこなかった。
これが、規制緩和で平成十三年度からこれが全部原則撤廃になります。そのためにいろんな業界の、新しい事業者が入ってくることになります。
(いわゆるクリームスキミング)
一つ例を取りますと、バス事業にとりましては、今までのタクシー会社とか、トラック事業者が自分の所でマイクロバスとかバスを買いまして、バス事業に入ってくる。例えば朝晩だけタクシーの流しをしていてもラッシュで流れないから、その間にバスで儲けておこうかというふうに、朝晩のおいしいところだけで、しかも市内の既存のバスが200円としますと、それを例えば150円とか100円とか、今100円運賃がずいぶんはやっていますけれど、100円にしたことでかなり乗客がふえてきておるんです、非常に利用しやすいということがありまして、そういう格安の値段で特定区間を走らせると、これがいわゆるクリームスキミングというおいしいとこどりという状態になってくる。
そうなってきますと既存事業者の方は、路線網がガタガタになってまいりまして、そうすると現在のダイヤを維持できなくなる、ということで大変な時代になってくるんじゃないかということが、今さかんに運輸省の運政審の中で議論されております。
(オール広電としての賃金体系では)
最終的に答申もでる予定ですが、そういったような平成13年度も目の前に来ておりますので、そういったバス事業がこれから立ち直っていくためには、どうするかということで、今の広島電鉄、オール広電としての賃金体系では企業全体がだめになってしまう、というのは、電車の方が毎年収益からすると6億円から7億円の黒字を出しております。バスがだいたい9億円から10億円の赤字を出しております。不動産がだいたい4億円から5億円の黒字。電車の黒字でバスの赤字を埋めて、不動産の黒字でなんとか食っているという状況なんですが、こういう状況でありますと、バスの自立再生も気分的に精神的にきちんとしない、それから電車も自分で儲けておきながら、自分の再生産への投資ができない。不動産も既に限界に来ておる、バブルもはじけまして不動産の不良債務もずいぶん抱えております。単価を安くしないと売れません、そういうことで原価を割ってでも今叩き売りのような状態が続いておりますが。
(とりあえず社内カンパニー制に)
そういったことを考えますと,将来会社全体として生き延びていくのには、電車は電車で再生産できてもっとそれが市民の足として、基幹交通となって広島に必要な存在として残らなきゃいけない。バスはバスで赤字をなくすためには、分社化をしなくてはいけないということが出てきました。それで、バスの分社化をこれからやっていこうとしているわけなんですが、いきなりと言うのではなかなか難しいと言うので、とりあえず社内カンパニー制にしたということです。
ですからこれが今後13年度を境にバスカンパニー、電車カンパニー、不動産カンパニーになってきますと、MSカンパニーの方が持ち株会社になってまいります。そうやって3つの会社を管理していくというふうなことになります。
(カンパニー制にすると何がメリットになるか)
カンパニー制にすると何がメリットになるかと言いますと、バスの乗務員さんの平均賃金が年収約800万円であります、タクシーの方々がだいたいその半分ぐらいじゃないかと思うんですが、非常に高額になってきております。そういう高額な運転手さんが閑散線区を走って一日何十人しか乗らないようなところをやっていると絶対ペイしません。そういったことで分社化をするときに今度は再雇用します、再雇用するときに人件費を下げていこう。新しく採用して人件費を下げて採算の合うようにしていこう。というふうなことがカンパニー制の主な目的であります。
昨年末から今年になってもだんだんカンパニー制を目指す会社が増えてまいりまして、今後こういったことが企業内に各部門を持ってますと、部門毎に独立採算というのが主流できていましたが、そういったものが今度分社化して、それぞれが会社にして採算が合わなかったらつぶしてしまうというふうな厳しい淘汰される時代が来るんじゃないかというふうに思います。
それを当社では、社長が大田というんですが、若い時に社長になりまして、改革路線を歩む社長でありまして、昨年広電タクシーという関係会社がございましたが、これも非常に組合が強く、労働条件が市内タクシーでも一番いいということで、赤字がずっと続いていました。改善すべく組合と話をしていたのですが、なかなか折り合いがつきませんでこれ以上やっていると赤字が増えるばかりだというので、北九州に本社があります第一交通というところに譲渡いたしました。
(不採算部門は整理して)
広電タクシーにおりました社員はそのまま全部移籍をしたということになりましたが。そういった不採算部門は整理していく、そして儲かる部門に投資をしてこれから企業を守っていこうというのが経営方針になりましたために、こういった電車のほうに日の目が当たってきたということになりました。私は丁度いい時期にやらしてもらうことになったなと思っておりますが、そういう意味ではこれからの将来の広島の路面電車、また日本の路面電車がどうあるべきか、というのが熊本が第1号でありましたが、第2号のほうは広島が今度新しい電車を入れますけれどもこれが本当に人にやさしい都市内交通のスムーズな交通となりうるのかということが、一つテストされると思います。そういった試練も待っているかと思いますが、なんとかやってみたいと現在思っております。
(営業キロ、採算等)
それで営業キロですが、鉄道が16.1km、軌道が18.8km,合わせて34.9kmあります。それから自動車のほうは広島県内と東京、大阪、米子、松江、浜田といったところの高速バス、広島空港のリムジンバス等をいれまして、約2200kmの営業キロ。関係会社17社、これはホテル、ゴルフ場、建設会社とかみなこれは私鉄経営のだいたい同じような内容でございます。
車両は直通車両45編成と書いてございますが、直通というのはJR広島駅前から宮島の駅までの直通です。これは鉄道軌道相互直通で乗り入れておりますので、これを直通といっておりますが、この直通というのが45編成あり、3両連接車が41編成と、2両連接車が4編成、これは古いタイプでありますがこういったものがあります。
市内車両が95両あります。自動車が644台あります。
従業員が今1890名おりますが、その中で鉄道の関係が236名、平均年齢34歳、軌道関係が348名、平均年齢36.5歳、合計で電車部門が584名で35.5歳、自動車部門が1140名で46.5歳ということであります。
営業収益的には電車部門が、鉄道関係が20億、軌道が50億、合計で71億で全体のウエイトは30.5%。自動車部門が、128億、54.7%。不動産が34億で14.8%こういった売上になっております。
運輸概況ですが、輸送人員、これは鉄道が2072万人、1日平均57000人、軌道は4487万2千人、1日12万3千人、合わせまして6559万2千人で18万人というふうになっております。この6500万人という数字はこの近辺で申しますと、北大阪急行と神戸電鉄、山陽電鉄さんあたりとだいたい同じぐらいの年間の輸送人員です。
自動車部門が5269万7千人ですが、これが6年前に逆転いたしましてそれまではバスが圧倒的に多かったのですが、いまは35km足らずの電車で、2200km余り営業キロを持っているバスより輸送人員が多いというふうなことになっております。
路線形態ですが、宮島から広電西広島までが宮島線であります、いわゆるむかし鉄道でございました。阪急電鉄の2両連結車を譲り受けてそれを走らせておりまして、ホームが1mの高さがあって、高床式の電車がこの区間を行ったり来たりしていた。
デルタ地域を走っているのが市内線、軌道路線でありますが、宮島線と市内線の接点である西広島駅で乗換えをしていたものですから、非常に不便だということで、昭和40年代ごろから路面電車を宮島線に入れたということであります。
(鉄道軌道相互直通で乗り入れ)
普通大手私鉄さんあたりは鉄道を都心にそのまま乗り入れをされたわけですね。いわゆる地下鉄とか高架とか、東京あたりでは地下鉄と相互直通乗り入れをやられて都心へ乗り換えなしで行っておられますが、それがわが社の場合資本力もなかったものですから、路面電車を鉄道に入れたということであります。ですから一時ここの宮島線の中は、路面電車タイプの低い35cmのホームと高床式の1mのホームが2つありました。それを階段とかスロープで結んで両方でそれを使い分けをしながらやってきてたのですが、8年前から高床式電車の乗り換えは非常に不便だということで、全部やめました。それで今はすべて直通の乗り入れ電車にしております。
最初は西鉄の福岡市内線に2両連接車というのがありまして、それを譲り受けまして、2連接では乗車定員が少ないということで、その真中にもう1つ車を入れまして3両連接車にしました、それを改造していただいたのが、アルナ工機さんでその頃からアルナ工機さん、東洋電機さんにはお世話になっているわけなんですが、そういった古い電車で最初は運行してたものを昭和55年に運輸省と日本鉄道車両機械技術協会といったところが、これからの日本の路面電車のありかたというので昭和55年に軽快電車といったものを造ってくれました。これは試験的に造ったわけですが、それが元となりましてそれ以降新しいタイプの3両連接車を入れまして、逐次車両更新はしてきているわけですが、そういったものが鉄道と軌道を相互乗り入れしている状況にあります。
写真で見てまいりますと、これが一番上がJRの駅前、いわゆる併用軌道です。
宮島線に入りますと専用軌道ですから、最高時速60キロで走っていく、ということであります。市内線の方は、道路交通法でおさえられておりますから40キロであります。
宮島線は現在60キロでありますが、今年から超低床車が入ってきますと、古いタイプの2000型とか3000型とか古い車両は、速達性が遅いということがありますので,市内に移します、新型車のほうは設計速度が80キロ出る性能を持っていますから、今度ドイツから来るのも80キロなものですから、それで足並みが揃いますと1年か2年後ぐらいには70キロにもっていきたいと思っております。
乗車人員の推移でございますが、市内バスは昭和43年をピークにずーっと落ちております、全盛期の1/3くらいになっております。市内電車も41年がピークで、年間5372万人利用していただいていたわけですが、42年から43年の1年間で600万人利用者が落ちました。この頃に東京、大阪、京都、神戸というようなところでどんどん撤去されてきておりました。