はじめに
[司会]それでは、中尾先生よろしくお願いいたします。
〔中尾氏〕只今ご紹介いただきました広島電鉄の中尾と申します。
本日ここにお招きいただいて、皆様方に講演というおこがましいことになりまして、非常に恐縮していると共に、本当に皆様方の参考になるようなお話ができるかどうか不安でございまして、結果がどうなるかわかりませんが一生懸命今まで経験してきましたことをお話申し上げ、また今から路面電車事業者としてどういう風に今から取り組んでいこうとしているのか、そう言ったことを少しお話を申し上げたいと思います。
実は、枚方LRT研究会の代表をされていらっしゃいます長山先生とのお付き合いが、実は4,5年前からございまして、それをご縁に今日までいろいろとご指導をいただいております。
(路面電車シミュレータ装置)
その内容と申しますのは、路面電車では初めて路面電車シミュレータ装置というのを取り入れることになりました。
これは、電車運転手を育てるときにどこが運転していて危険かといういわゆる危険予知訓練のためと、それから既に運転手としてやってましてその中で日頃やっぱり事故を起こしますので、自動車との接触事故が多いのですが、そういう接触事故を起こしている者にたいして、事故防止の教育をするときに、どこが自分は危険なとこを見逃したかな、という風な訓練装置をなんとかお願いできないだろうかということで、長山先生にいろいろご相談申し上げていましたところ、関西地区の大学の先生方、今日お見えいただいておりますが、7,8名でしたと思いますが、その方々が広島に調査にきていただきまして、そして運転手がどういうことで事故を起こすか、いうことを地理的条件と、運転手の心理的条件、健康面、気象条件等色々条件を加味しながらそれをコンピュータに打ち込みまして、それから実際の映像を電車にカメラを取り付けて、その映像を取り込んでそのコンピュータと連動させて、それを見て実物のハンドルで危ないと感じたときにブレーキを入れますとコンピュータに入ってどこのタイミングで危ないと判断したのかと言うことがデータ的に全部出るようになっております。
それをやることによりましてヒストグラムが出てきます、その中で大体平均値が出てくるわけですね。その平均値に入っていれば普通の感覚を持った健康的にも心身的にもまあいいという、そういう運転が正常にできる状態にあるという人が普通なんですけれど、それより明らかに速いとか、明らかに遅く発見したと言うのは事故の可能性がもっとある。それが今までぜんぜんわからなかった。どういう指導をしようにも個性がまったくわからなかったものですから、この装置を導入してからそう言ったことがわかるようになって、個人個人によって鈍いとか、反応が早いとか個々の特性がわかりやすくなって、現在,事故もかなり減ってきております。
そして新人の教育についても早い段階から適切な指導ができるようにになってまいりました。この装置を作るとき,長山先生には大変お世話になりまして誠にありがとうごさいました。そういうことがあったご縁で今日来ておりますが。
先般,事務局の貞方さんから会報を送ってもらいました。これを読みまして、非常に怖くなりました。
それというのも今年の8月に豊橋で第4回の路面電車サミットが行われます。第1回が札幌、第2回が広島、第3回が岡山であります。2年ごとにやっておりますから、もう8年になるんですが。
(マニアックな世界→都市計画の中で交通はどうあるべきか)
その当時にはこういった路面電車を考える会と言うのは非常に数が少なかったのです。当初大体八つぐらいの団体がございましたですけれど、それはどちらかと言うといわゆる電車が好きと、電車に乗ったり写真を撮ったり古い電車いいのだというマニアックな世界の支援団体だったのですが、最近は真剣に都市計画の中で交通はどうあるべきかと言うことを考える団体も増えてきました。その中で、この会報を読んで見まして本当にLRTに対して理解が一番日本の中で深いんではないかな、また知識的にも非常に正しい情報が非常に多く出ておりまして、非常にびっくりいたしました。
それから長山先生の最初のご挨拶にもありますが、いわゆる枚方にとって何をいまからどうして行かなければならないのかという導入の目的、つまり調査目的、研究目的が非常にはっきりしている団体とお見受けいたしました。それで2年と言うことですが、2年の間にずいぶん会員が急速に増えているのもそう言ったことで自分たちの町の交通を何とかしたいということの表れがそこに出ているんじゃないかと思います。非常に熱心なグループだというふうにお見受けいたしました。
それで本日お話していく中で、前回近畿大学の三星先生がずいぶん具体的に細かくキーワードをそれぞれ詳しく説明されてLRTの中身がよくわかるようになっておりまして、むしろ私のほうが勉強さしていただくような資料になっております。
(いかにして電車を今日まで存続させてきたか)
今日はまず,私の所が今まで昭和30年代、40年代に路面電車が各地で相次いで廃止されていく中で、どういう風にして電車を今日まで存続させてきたかというあたりの状況と、新型路面電車時代と言うことで、一昨年8月1日に熊本市がドイツのADトランツ社製の超低床電車を日本に最初に導入されましていよいよ超低床時代がきたということがありました。これは非常にインパクトが強かったわけですが、それに続きましてわが社も今年3月下旬に第1号車がドイツシーメンス社、日本ではアルナ工機さんのほうにお世話になっておりますが、そう言った関係で3月に1号車、今年の秋にそれぞれ入っていまして夏までには合計4編成そろえるつもりでおります。そう言ったようなこれからの車両の近代化をどういう風に考えているのかということと、それから交通についてはどうしても交通結節点といいますが、それぞれ今までは、各都市どの都市も自分とこの交通エリアを守るのにお互いの事業者が競争ばっかりして自分のエリアを守るのに必死だったわけです。その中で利用者の乗り継ぎの利便性の問題とかいうものがおろそかになってきておりまして、利用者本位の交通ネットワークになってなかった、システムになってなかった。そこらへんで最近,交通結節点の見直しがずいぶん言われ出した、それでそこらへんをどういう風に考えていくかということも話をしたいと思います。
(行政側の取り組みの内容)
それから行政の支援が最近どうなのか、LRT,LRTと言い出したじゃないか、これはなんでだ。というふうな行政側の取り組みの内容等も今日お話を申し上げたいと思います。
それから他都市ではどういった新しい動きが出ておるのか、そう言ったこともお話したいと思います。
だいたいひとまずお話が終わりましたら、後半にかけまして昨年春ヨーロッパのほうに建設省が主催でLRTの調査団をつくりまして、私も参加させていただきまして、私が撮ったビデオがありますのでそれを少し見ていただけたらと思います。
それから、最近はドイツでもカールスルーエでは、路面電車が国鉄に乗り入れています.日本でもそういう動きがでてまいりまして、また新幹線が地方へ行きますとフル規格ではなくて在来線に乗り入れる新幹線というのが検討されております。それをやっていく方法が、線路を1067mmから1435mmの新幹線規格にレールの幅を改めるという方法をするか、それとも、スペインのタルゴ社というのが可変台車というのを作っておりまして、それで台車のほうを合わせていくかというその二通りがあるわけなんですが、日本の鉄道総研では可変台車をようやくテスト段階に来ておりまして、そのビデオも入手しておりますので、今日時間がありましたら、実際にどうやって軌間を変更するのか見ていただければというふうに思います。