【法的アプローチ】

 (免許・特許)

ここで法律関係の話が出て参りましたので,ちょっと話をしておきますと,今の話にもありましたように,運輸大臣,建設大臣は特許,いわゆる免許特許,事業を始めようとすると免許特許を必要としますが,その場合には大臣の権限になります。

 免許特許を受けまして今度は工事施工をしたいと言うことになりますが,工事施工の段階も大臣の認可になります。それからいったん認可を受けて部分的に直していくとき,それは都道府県知事あるいは地方の運輸局長でいい,という事なります。いわゆる主務大臣の権限を地方の長官に委任する委任事項があります。そういったものになっています。

 だんだんとこういった地方への権限委譲というのは多くなっています。これはいい傾向だと思います。今の連結車両の長さは軌道法の運転規則の46条です。これは30メートル以内,平均速度は53条で40キロ以下ということになっています。

 それからここに運賃規定というのがありますがこれは軌道法の運輸規定の第8条で無効の乗車券および乗車券の検査を拒む者に対しては,相当運賃あるいはその2倍以内の増運賃を請求できるという罰則規定があります.ここが問題なんです.長さは特別認可とかなんかでどうにかなります。

 ここの地元の京阪電鉄の京津線もこんど地下に一緒にはいると言うことで15メートル車両が4編成で62〜3メートルなったんだと思いますが,大津市内で1キロほど併用区間を走るんですがそれで特別認可を頂かれたんですが,これがなかなか厄介だったんです.あそこの部長さんが運輸省に日参されてようやく認可もらわれたんです。あれは認可条件としては道路上走るところでその1キロの間で停留場がないんですね.停留場がないから一応認めて頂いたんです。

 それから福井鉄道も鉄道の2連結車両が入ってますが,30メートルちょっと越えているんだと思いますが,特別認可を頂いたものです。いうようなことで長さについては大体認可を頂けるんです。速度についても問題ありません。道交法では40キロということになってますが,マスコンをガチャンとやると自動加速するもんですから,中には50キロとか55キロも出す者がおるんでヒヤッとするときもありますが,あれは大した問題じゃないといったら怒られますが,通常の運行で問題はないです。

(問題は運賃)

 問題は運賃です。長山先生も会報の中でおっしゃっておられましたが,結局,先ほどの超低床車両の30メートルの長いやつを入れますとメリットとしては大量輸送ができます。200人も300人も運びます,ところが日本ではこの法律があるために車掌を二人付けなければなりません。ヨーロッパではセルフチケットになってまして,フリーチケット制といいまして,自分で乗る前にチケットを買います。それで車内にチケットキャンセラーがありまして月日と時間を打つようになってます。それをガチャンとやっておけば後はフリーで降りるわけです。運転手しかいません,運転手も運転だけです。運賃収受もしません.全く後は,電車の長さが30メートル,50メートルあってもお客さんが勝手に乗って勝手に降りるだけです。いわゆるセルフ方式になってます。

(罰則規定をやろうとすると、法務省も)

 日本でも最終的には我々はやろうと考えていますがなかなか,この法律が邪魔してまして実際の導入に至りません。何故かというと日本ではこの罰則規定をやろうとすると運輸省だけではいけないと言うんですね,いわゆる法務省も入れないといけません,という事で,非常に問題の波及するところが多いんです。そういうことでなかなか簡単に触れられないと言うことです.

 それならば地方条例に下ろしてもらったらどうか,例えば広島市条例の中でこの罰則は10倍も20倍も貰えるようにするとか,または我々事業者が独自に罰則規定を設けて,自分の駐車場に無断駐車したら1万円いただきます!みたいにですね,それもやっぱり効力あるみたいですね。1万円取れるみたいです。だからそういったことも出来ないこともないんですね,我々サイドで出来るようにそういった権限をおろしてもらえないかと考えてるんですが,なかなか難しいです。

 運輸省の方も解ってくれてるんです,ヨーロッパに自分たちも調査にいって素晴らしい方式だと,あれならば人件費も運転手一人で,車掌がいらないしいわゆる生産効率的なものも非常にいい。経費も削減できる,というので何とか努力はしてくれてますが,なかなか難しいです。ですから今の最終目的はこれにターゲットを絞って行こうと,何とかこれを解除してもらおうとお願いに行ってます。

(日本の罰則は,相当運賃と,2倍の運賃)

 日本の罰則は,相当運賃と,2倍の運賃ですから合計3倍ですよね.いまうちの場合150円ですから3倍で450円.それが中で検札に来るわけですが,常時出来ませんから,確率の問題で450円払った方が10回のうち1回見つかる程度だったらそっちの方が安いということになるんですね.

(ヨーロッパの方では、即40倍とか50倍の罰金)

 その点ヨーロッパの方ではそういうことがあるので罰則が厳しいです。即40倍とか50倍の罰金を取ります。これはもう否応無しだそうです。私もいっぺん会いましたが日時をちゃんと打ってたんで大丈夫だったんですが,中には打ってないのがおられまして,やっぱり取られてました。その検札も制服制帽着てるのと私服の人がおられて,私服の方が多いんだそうです。何故かというと制服制帽で乗り込んで来ると,反対の方から逃げて行くんだそうです。だから完全に私服で手帳を持って両側から入って来るんで,なかなか逃げられないそうです。

 ただ先週ポツダムへ行ってそういう話もしたんですが,確かにその不正は2〜3%なんでしょうが,通勤者に言わせると5〜6%はやってるでしょう。通学の学生に言わせると20%はやってるんじゃないですかと言うんですね。いわゆる公式見解と利用者の意識の差がこんなにあると言うことですね。結局学生はどこの国へ行ってもそう言うことをやりたがると言うか,スリルをもってやっているみたいですが。

 ただむこうはそう言う不正があってもかまわないんですね,収入減でもかまわないんです,それをカバーできるシステムになってるんです。

 運営費の経費を賄うのに,日本では全額それを運賃収入だけでやってますが,向こうでは4割から5割の運賃収入があればいい。あとは州なり市が補助するんですね。ですから少々の不正は片目をつぶるという所がありまして非常にいいシステムになってます。

(運輸連合方式)

 ですから,とにかく料金はあんまり高くないし,利用しやすいフリーチケット制にしてるし,1日乗車券と言うのも出しているし,非常に利用しやすいシステムにしていると言うことです。ですから今,広島でも東西線構想で新交通システムを延伸するとか言う議論がなされてますが,バス6社もあって非常に競合していてどこも苦しい状況で,広島市が運輸連合方式と言うのをいま勉強しています。ヨーロッパはほとんどが運輸連合方式いわゆる県とか市が一緒になって,交通税を取ったりしてやっております。

 そう言う運輸連合方式が日本でも出来ないかというので,広島の場合はようやく勉強を始めました。我々のほうもバスの赤字とか電車が四苦八苦してやってるよりは第3セクターとかそういった運輸連合方式にして,いくらかでも公的補助が入るようになれば,もうちょっとサービスが良くなると思うんです。まあそう言ったことも踏まえて,何とかできないかと,今勉強をしているところです。


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