3 市民中心の将来の交通体系を構築するためには

1) 環境負荷の少ない交通手段の選択

 将来の環境問題を真剣に考えなければならない今日、新しい世紀のはじめにわれわれ市民一人一人が車社会から公共交通機関への転換を真剣に検討し、どのような交通手段を選択するべきかを考えなければなければならない時代です。

2) 定時性・速達性・経済性・快適性・安全性の高い交通手段の選択

 市民の立場から考えると、定時性・速達性・経済性・快適性・安全性などが高い交通手段が求められますが、その意味でLRTは最適なものです。

 軌道上を走行するLRTは優先信号などで定時性が保たれ、また、ステップレスの低床式で乗降時間が短縮され、チケットキャンセラー等による自己責任の向上とともに停車時間が削減されます。また建設コストもミニ地下鉄の約15分の1で、さらにエネルギー源が電力であることもありクリーンで運行コストも経済的です。高性能化された車両により静かで揺れない乗り心地で快適性が確保され、また優れた加減速性能により、車や歩行者との共存・安全性が保証されています。

新谷洋二 「まちづくりとLRT」 都市地下空間活用研究 No.38 1998.4 より

   

3) バリアーフリー度の高い交通手段の選択

 高齢者・障害者をはじめとして一般市民にとってもバリアーフリーの社会形成が求められています。物理面・制度面・情報面のバリアーフリーだけでなく、市民全体の意識改革により真のバリアーフリーを実現する必要があります。バリアーフリー度の高い移動手段を獲得することによって市民全体の幸福な生活につながり、社会参画が高まることも期待されます。

写真3 低床式LRTでは車椅子もひとりで楽々と乗車できます

     

4) アクセス性の高い交通手段の選択

 道路交通との立体交差が交通網の合理性追求として求められてきましたが、公共交通機関が上空と地下に移ることによって、上下移動が交通手段へのアクセスを困難にしています。バリアーフリー法によってエレベータ・エスカレータなどの上下移動手段が義務付けられましたが、プラットホームへのアクセスに困難が伴うことは否定できません。路面を走るLRTは路面より即乗降が可能であり、その意味でバリアーフリーの代表と位置付けることができます。

5) まちづくりの一環となり得る交通手段の選択

 これまではどちらかといえば別々に行なわれてきた都市計画と交通計画は、今後一体化して行われなければなりません。ハード面だけでなくソフト面からのまちづくりが企画されなければなりませんが、その場合には市民の移動手段を抜きにしては考えられません。

 楽しい・快適な移動手段とまちの一体化が図れる夢のあるLRTが望ましい存在です。

6) 楽しさの体感できる交通手段の選択

 目的地までの移動を行なうためのみに乗り物が考えられてきました。しかし、人間は移動そのものに興味を持ち、関心を示す存在です。大きな窓による明るい車内、窓を通してみる人々の生活との一体感、さらに優れたデザインを取り入れることによる走る車両の美観とそれに対する市民の誇りなど、欧米のLRTは何ものにも代えがたい市民生活の心の豊かさをもたらしています。

写真4 素晴らしいデザインのLRT 写真5 まちを楽しく・美しくするLRT

    

 以上のように市民生活を中心として交通手段を考えた場合LRTが最適なものとなり、それの実現を強く唱えるものです。


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