枚方の公共交通システムとそのネットワークを考える
それでは一番最初に「枚方の公共交通システムとそのネットワークを考える」ということで、ご報告申し上げます。
LRTの路線を考えるにあたりまして、一つだけ考える…もちろん最初は一つのルート=「枚方市駅〜藤阪駅」のルート、これが重要課題でございまして、やはり枚方の全体の公共交通システムを考えてみる必要があると思いますね。その部分を受け持ちました。
枚方の公共交通システムとしては、我々としてはLRT、鉄道、バスのそういう“ネットワーク”を考えていきたいということでございます。けれども、今までの枚方の公共交通政策には“ネットワーク”という考え方が欠けているのではないかと言われてまいりました。我々の日常のモビリティを高める公共交通の機関というのは単一経路ではなくて、ネットワークを形成していることが望ましいわけでございます。
それで、公共交通のネットワークというのは一体どういうふうものだと考えればよいのだろうか? 網目状になっているのが望まれるのですが、ひとつひとつの交通機関がひとつひとつの路線単独であるのでなく、連結しているというのが、ネットワークの必要条件であります。そして、目的地に行くことが乗換によって可能となったり、一つのルートだけでもなく幾通りかルートがあって、そのうちどれが自分にとって最適なのか色んな条件の下で選択可能であるような、そういう風な「市民の足」として非常に便利な条件がつくられるのがネットワークだと思います。
料金は乗り換えても同一料金である−まあ、先ほどのフライブルクの事情なんかも非常にわかりやすい料金で、しかもあれは大人2人、小人4人、それが単一料金で乗れるということです。3〜4年前ですか、先ほどのストラスブール、それからフライブルク、この枚方・LRT研究会で見学にまいりました。その時料金表を見ていますと、犬まで一緒に連れていけるような、そういう料金が設定されておりまして、市民にとりまして非常に好ましい状況がつくられております。
鉄道と軌道−LRTを軌道と名付けましょう、バス、その全公共交通機関が連合してそういう風な料金を体系付け、そして非常に便利な乗物体系にすることが、公共交通のネットワークであります。
乗り換えるとしても、その乗換抵抗が低くてバリアとならないようにする−現在ですと、割に高架の鉄道と下のバスを乗り換えるのに大変な苦労をしなければなりませんけども、そういう風なことがないようなバリアフリーの状況をつくる−パークアンドライド、バスアンドライド、あるいはバイクアンドライドというものなどとのネットワークも当然考えられるべきでありましょう。
外国におけます公共交通のネットワーク、これはやはり非常に参考になります。その例として、私はいちばんネットワークとして優れているのはチューリヒだと思うのですが、スイスのチューリヒとバーゼルのネットワークをまず最初に見てみたいと思います。(→チューリヒのネットワーク)
チューリヒはスイス最大の都市ですけども、人口36万ですから、枚方より少し少ない位の都市であります。ここは1871年に中央駅が落成しまして、1882年に最初の私軌条であります路面馬車が運行開始しております。1890年には“Sバーン”という、まあ言ってみれば大阪でいきますと東海道線だけでなく環状線とか周辺に行っております、そういう風な鉄道ですね、それが開業致しました。Sバーンと、それから言ってみれば大阪ですと紀州へ行くものとか東海道・山陽、そういう風な鉄道=Sバーンプラス鉄道、そしてトラムと書きましたが路面電車、そしてバスそしてチューリヒにはチューリヒ湖がありまして、そこの湖で船舶、そういうもので公共交通システムがつくられました。交通連合で料金は一つであります。現在、その中のトラム=路面電車は13系統あります−ですからあちこち走っているんですね。ちょっと見にくいので申しわけございませんが、ここにチューリヒ湖がありますが、その街この辺全部丘です、こっちも丘です。丘の上にまでトラムが行っております。チューリヒの路線網、トラムの路線網、リニエネッツともうしますが、ここが中央駅です。ここにあちこちからの鉄道が入ってきておりますし、Sバーンの中心地点であります。そこにやはりあのトラムが集中してきております。ここは少し中心から離れたミッテンベルクという駅ですが、ここには5系統来ておりますね。
ここはごめんなさい4系統、ここが5系統来ております。
チューリッヒのトラムとバスのネットワーク
トラムとバスが同じ停留所を使用
中央駅付近 多系統の路線が集中
周辺部のMilchbuck駅にも4系統の路線が
ネットワークを形成している
バスとの乗換抵抗なしで非常に便利に乗り換えられるようなシステムになっております。街全体に、安い料金で自由に移動できるような公共交通のネットワークが張り巡らされております。
ちょっと(これは)チューリヒのトラムとバスのネットワーク、トラムとバスは同じ停留所を使っておりますので、その実体をご覧いただきます。これがバスです、私が乗っておりますトラムの一番後ろからバスを映しておりますが、こちら側向けには一般の車も通れるようになっています。同じプラットホームにバスが入ってきました。乗換が非常に便利にできるような構成になっております。これは中央駅付近です。
ハウトシュトラッセというこちら側に中央駅があって、その前に直角に走っているところです。これをご覧いただきますと、先ほどのトランジットモールが形成されております。これはここへいろんな系統が入ってきておりますが、この右のほうに中央駅がありまして、この部分は車が通っていますが、軌道は4つあります。
今のも5両編成ですが、これもご覧下さい。1両、2両、3両、そしてそれが1編成で1両、2両、3両、それが2つ繋がって、7系統の路面電車が走っているわけです。これはちょっと外れた周辺部の、先ほど四角く書いてましたビレッジフット駅には4系統の路線がネットワークを形成しています。7番、9番、10番、11番−4つの系統がここに集まってきて、皆さんの足になっているわけです。
(→バーゼルの公共交通ネットワーク)
スイスの第4の都市、バーゼルの公共交通のネットワークもご覧いただきましたらわかりますように、同じ所にも色んな所から入り込んでいます。同じ所に2系統のものが走っていたりします。これなんか、3系統走っていましょうか? 人口18万の都市に11系統の低床式の路面電車が走っているのです。さて、こういうふうなネットワークをなしますものを、枚方のLRTとしては、そういう公共交通ネットワークとしてどう考えていったらいいのか、ということであります。LRTだけを考えるのではなくて、他の鉄道、バス、そういうものと組み合わせて考えていかないといけない。現在の人の移動現状をそういうものにマッチしていく必要がありましょうし、将来都市合併も考えて、寝屋川とか交野とか高槻とか八幡とか京田辺とか学研都市なども視野に入れる必要があるわけでありますが、さし当たっては枚方市内のネットワークを主として検討していきたい、こういうことです。
現実に枚方でのネットワークを考えるにあたりまして、京阪電車の本線、交野線、JR学研都市線などの鉄道線、それから京阪バス、京阪宇治交通、そういうふうな各系統なども、本当は全体を考えに入れる必要があって、それとどういうふうにうまく結びつけていくかということが、必要でありましょう。鉄道駅、これはLRTが考える場合に重要な結節点でありましょう。住民、人口の集中地、あるいは公共施設、大学とかですね、集客施設など、これらも考えに入れて、どういうふうに人が移動できれば最も好ましいかということを、考えていかないといけません。京阪電車ですと枚方市、樟葉、枚方公園、香里園、交野市、寝屋川市、これらが都市の周辺の駅であります。JRの学研都市線としては藤阪、長尾、津田、松井山手、星田なども考えに入れてしかるべきであるでしょう。
先ほどストラスブールの郊外ということをいわれていましたが、ストラスブールの郊外の郊外はあまり自然環境へアクセスしませんが、フライブルクはもう明らかに非常に山の奥のほうへ入っていっております。チューリヒももちろん森にアクセスしていますし、バーゼルもベルンも全部、自然環境にLRTをアクセスしておりますので、枚方市の場合も、東部地区へのアクセスが当然あってしかるべきでしょう。諸外国のネットワークには、自然環境へのアクセスが必ず含まれているといっていいと思います。
(→枚方市の鉄道網)
さて、枚方市のちょうど市の境を、赤く示してみます。ちょっと見えにくいですが、ここに赤の市の境です、青が鉄道です。現在、青の鉄道はこれとこれですね。バスはありますが、鉄道のネットワークは寂しい限りであります。特にここの河内森などは、利用された方、非常に不便で、非難囂々であります。300メートルは歩かないといけない、その間の人の移動に関しての目線が含まれていません。(→LRTネットワーク)
これが京阪本線、交野線、JR学研都市線がこれであります。LRTのネットワークを考えて入れてみます。こういうふうなものが考えられるのではなかろうか、もっと密なネットワークが好まれるわけですが、こういうことが考えられます。これが枚方市駅、藤阪駅、これが樟葉です。ここに松井山手の駅がありますし、ここに津田があります。これは星田です。枚方公園の駅はここですし、香里園はこのあたりですね。そういうふうなネットワークが考えられてしかるべきでありましょう。ここに挙げましたのが、枚方市駅と藤阪駅の間のルートでありますし、ここへ挙げましたのが枚方市の緑の地域であります。これは関西外大、これが山田池、これが枚方市の総合体育施設、王仁公園、大阪国際大学などがこういうふうな形で、多くの人たちを抱えております。ここに香里園、香里団地がありますし、この辺に藤阪のハイツなどもあるわけであります。そういうふうな形で、今後はもっと理想的なネットワークというのはどう考えていったらいいかと言うことが議論される時期になると思いますが、今回はさし当たってはこの3案提案させていただくという形で発表していただく訳です。私の発表は以上です。