枚方・LRT推進会 第5回総会 座談会
「枚方・LRT研究会のこれまでの活動総括と今後の展望」
出演者:長山代表,藤田副代表,鎌田副代表,三星世話人,貞方事務局長
(長山代表;以下 長山)
この研究会の活動を考えてみますと,色々な背景がありましてそれに関しては会員の皆様に必ずしも十分にお伝えできなかったと思います.ライトレールという会報がありますけれど,ここにでてきますのは表立ったところだけで,実際活動の裏話的なことはこれまでは会員の皆様にお伝えできていなかったと思います.研究会といいますかこういう組織がうまく行くためには会員の皆様と知識の共有をしておかなければいけない,これが非常に重要な点だと思います.で,今日はそのあたりの背景を含めまして,この壇上の皆様にお話をしていただこうかと,こういう次第です.
座談会ということで,気楽に皆様にはそうお願いしております.話題としては,これまでの活動の総括をしていただき,今後の枚方でのLRTの実現に向かってどのように活動していけばいいのか,将来に向けての展望をテーマと致しております.それでは前置きはこのくらいにして,この会員の方たちもそうだと思いますし,枚方市民の方もそうなんでしょうが,なぜ枚方にLRTという公共交通システムを実現しようとしてこんな会ができたのか,枚方にLRTはできるのか,これが皆様もっておられる大きな疑問点じゃないかと思いますが,この研究会を立ち上げるにあたって中心的にやっていただきました貞方さんからそのあたりの事情についてまず口火に話していただけたらと思います.お願いします.
(貞方事務局長;以下 貞方)
貞方と申します.今司会者のご指名がありましたので,なぜLRT研究会というものを立ち上げたのかという話をさせていただきます.私は1980〜1996年まで,道路の問題だとか交通の問題を仕事で携わらせていただきました.それで1994〜1996年の3年間枚方市の総合交通体系の調査の委託事業を担当させていただきました.実は枚方市に交通対策課という課がございましたが,この交通対策課の時代に,枚方市の交通渋滞の調査を90〜92年の3ヵ年で約5000万円のお金をかけてやっています.それから94〜96年にかけて総合交通体系の調査の委託事業をこれは大学の先生方を中心にしまして,委員会を組織してやりました.
それで総合交通体系の調査といいますのは,主として枚方市の道路の整備をどのように促進するのかという観点で調査をされました.そこで枚方市が計画決定しております,道路網の整備をすべてやろうと思ったら200年かかるだろうということです.これではとても枚方の交通問題の解決にはならないだろうということで,当時長山先生に色々ご指導いただきまして,LRTについて総合交通体系の調査の中に若干言及していただきました.それがLRT計画路線ということで,3つの候補が挙げられまして,そのうちの1つの枚方市駅からJR学研都市線藤阪駅のルート,これが一番有力であろうという調査結果が出ております.これはそんなにつめられた報告書は出来なかったのですが,その後マスコミでもヨーロッパのLRT事情が伝わりまして,それと何より大きかったのは96〜97年に,当時建設省の都市計画中央審議会の答申の中に「公共交通は都市の装置である」という答申が盛り込まれたことです.私たちが94〜96年に枚方市の総合交通体系の調査を行っている時には,こういうことが出されてくることは予想もしておりませんでした.
この考えは一昨年,枚方市のLRT研究会で総会の壇上でご講演いただきました,新谷先生が中心になって,この「都市の装置」だという考えが打ち出されたと聞いております.そういうことで,96年ぐらいになりまして日本の車中心社会を反省するという答申がやっと出てまいりまして,その考えでもって枚方市の総合交通体系は調査を行っていなかったため,依然として,枚方市の道路網の整備をどうするかということが中心で,非常に残念でならなかったことからこの会を立ち上げさせていただきLRTを中心にやりたいということで,長山先生と三星先生にご相談させていただきこの会を立ち上げることが出来たんじゃないかと思っております.
(長山)
どうもありがとうございました.この研究会が出来たのが1998年の6月13日の発足設立総会であったと思います.それに先駆ける96年というころにすでにLRTという考えがでていたことですが,私が関係したのは枚方市の交通事故の分析なんですね,そのころから渋滞の問題もですが枚方市の交通事故の大部分が原付なんです.公共交通が必ずしも発達しておりませんので,皆さん原付に乗って駅まで来られる,買い物に来られる.原付が渋滞している中を通ってそこで歩行者をはねたり,車にはねられたり,そういう現状を見ておりまして何か枚方の交通そのものが変わらないといけないんじゃないかと貞方さんとは頻繁に意見の交換をしていたんですが,その中で確か96年か97年に大阪府が交通環境のシンポジウムをやりまして,そこに三星さんも出ていただいて,私がコーディネーターをやってその中で,ドイツ人のクライバームさんという方の,「車から公共交通機関でドイツでもフランスでもLRTが発展していて」という話について三星先生も意見を述べられて交通環境を良くするためには,マイカーから公共交通への転換を図らなくてはいけない.これが一つの大きな課題であるということで意見がまとまったわけです.そこに貞方さんもお聞きになられて,それが一つのきっかけになってぜひとも枚方にLRTを推進する会を作らないといけないということから発展したんじゃなかろうかと記憶しています.
まあこういうふうに枚方でなかなか難しい問題を抱えているわけですが,藤田さんもいつもその車から公共の乗り物へと,非常に熱心に活動していただいているわけですが,どのような活動を藤田さんご自身としても,あるいは研究会としてもやってきたのかについてもお話いただけたらありがたいと思います.
(藤田副代表;以下 藤田)
この会が発足された時,ちょうど5年前ですけれども長山先生のおっしゃることに非常に触発されまして,この会に入会させていただきまして楽しく活動させていただいておるんですが,本当に枚方市というところは,よく交通情報なんかで必ず出て来る名前でございます.渋滞情報で色々なところがラジオで流れている.私自身も大阪から帰ってきて,寝屋川からスムーズに来れても,枚方の手前で車が止まってしまう.京都から帰ってくるときにはちょうど家具団地を越えたところから詰まってしまう.本当に枚方というのは運転する者にとっても当然ながら運転しない者にとっても,非常に交通混雑による経済的なマイナスが大きいと常々思っていたわけです.
3年前ヨーロッパの方へ視察旅行へ同行させていただきました.そこでヨーロッパの公共交通のあり方を目の当たりにして,このようなものが枚方に走ったらすばらしいだろうなと,枚方という都市が一段と住みやすく,そしてまた我々市民として非常に大きな誇りになるんじゃないかなと感じまして,その私が感じたこと感動したことを,各種団体にお願いして時間をとっていただきまして枚方・LRT研究会のPRをさせていただき,皆様に非常に関心を持っていただいているわけです.特に写真とかビデオなどを使いますと皆さん非常に分かっていただきまして,興味を示していただき研究会にもかなりの数の人が入会していただきました.そうこうしているうちに行政に対してもっと働きかけないといけないのと違うかということを感じたわけです.それよりも前に市民の意識「LRTとは何ぞや」ということがぜんぜんまだそういったところへいっていないから,特にヨーロッパに行った方は路面電車をよくご存知だとおもいますが,何もなしに観光だけで行っても路面電車が走っているだけの感じしか受けないんじゃないかと思います.枚方に路面電車を走らそうという運動があると聞いた人がヨーロッパに行き路面電車を見て,初めて路面電車のよさが分かり,また感じるものが違うだろうと思いまして色々とPRに回らせていただきました.非常に熱心に皆さん聞いていただけたと私は思っております.
私はいつもPRの冒頭に「私も車人間であります」と車がなければ1日たりともすごせない人間ですと,その人間が今の車社会を少し見直してみようじゃないかと提案して初めて皆さんに同意していただけるのかなと思っております.やはり皆さん交通の問題については非常に深刻にお考えになっていらっしゃるんだと身にしみて分かりました.そして,昨年我々の研究成果を提言として昨年の5月の総会の時に市長に提言させていただき,市長からも総会についてメッセージをいただいております.そんなことでこれからの会をもっと盛り上げて市民の意識を盛り上げないといけないんじゃないかと感じている今日この頃であります.
(長山)
ありがとうございました.色々とお話いただきまして,実際に問題意識をもって物事を見てみると新たなる発見があるということでしょうね.我々もLRTというものについて意識しながら,ヨーロッパで利用してみますと,色々と問題点も発見できるのですが,今藤田さんがおっしゃった車がないと生きていけないということについて私もずっと車に毎日乗っておりましたが,それは吹田まで大阪大学のキャンパスまで通う時に電車で回りますと大変なんですね.まずバスに乗って枚方公園まで出ます,枚方公園から淀屋橋まで行って千里中央までそしてバスに乗る.これを往復しますと確か1日2000円くらいかかってしまうんですが,それも1時間45分かかるんですが,車ですと30分で行けガソリン代だけですと200円もかかりません.この交通にかかる費用の問題も非常に大きな意味があると私は思います.だけど最近は淀屋橋に通っておりましたので,今は谷町4丁目ですが,そうですね昨年の1月に車を買い換えてからまだ300kmも走っていない.もう殆ど乗らなくなったんですね.そのように癖になりますと,車というものに乗らなくてバスに乗ることになります.私の近所にこの4月から“ろ号”といいます京阪バスの新しい路線が出来ました.小型のマイクロバスが近所の住宅地の中を走るようになり,非常に便利なものですから,それに乗る事にしています.1時間に1回しか走りません.それも10時〜4時ごろまでしか走りませんが我々の生活がそのバスのスケジュールに合うようになって参りました.本当に考えられないことですけれども,出る時もその時間に合わせて出ますし,大阪から帰ってくるときにも,時間を見計らって帰ってくるそういう使い方をするようになりました.私の近所のそのバスを利用する人たちの話題も,新しいバス路線が出来たことの話をしておられるので,1つのバス路線が出来たことで皆さんの生活が変わり非常にありがたいものだと感じておられるなど,つくづく身にしみて感じるようになりました.
そういう意味で枚方市のどこかにLRTの路線が出来たら,大変な革命になるんだろうなと感じています.そういう交通システムというのは,大きな意味を持っていると思いますが,枚方市の総合基本計画の中にLRTという言葉が使われましたし,公共交通のシステムという言葉も使われておりますけれども,この審議会にこの研究会の世話人もやっていただいている近畿大学の三星先生が委員として出ておられまして聞くところによるとかなり強力にその中にLRTという言葉を入れていただいたと聞いております.どのような背景があったのかそのことについて三星さんからお話をいただきたいと思います.
(三星世話人;以下 三星)
私は,かねがね自動車交通が行き詰まると思っておりました.公共交通が自動車に食われていきますから,崩壊していくという実態がまざまざと全国で展開してきたのを見てきたわけでございます.地方部でもそうですが,都市部でも今そういう状態になりつつあります.そんな中で公共交通をもう一回立て直さなければいけないということはかねがね思っておったことでございます.これは,社会政策論や社会システム論みたいな話になってくるわけで,幅広い連携が必要になってきます.近年の行き詰まりの中ではっきりしてきたのが,都市の持っている基本的な政策の問題でもあります.基本的な政策として,よく引き合いに出されるヨーロッパの都市の場合,国全体もそうですし,各市が公共交通を守り発展させる.自動車交通については便利さも認めながらその限界をしっかり認識する.特に環境破壊から都市を守る.欧米では便利な公共交通を市が提供するという基本政策を持っています.
よく考えてみますと,日本の都市にはどこにもそれがないんですね.貞方さんがおっしゃるように,都市計画課だとか交通政策課みたいなところが,調査業務としてやった事例は近年ありますが,しかし今申したような基本政策のところにたっていないです. LRTというのはそれを解決してくれる一つの鍵として重要となると考えたのですが,大阪府下を見てみますと堺市LRTの話もありますが,市民基盤が少ない.したがって,役所の中の議論だけになってしまいがちです.自動車交通をどう抑えるかが問題です.しかし,その政策をTDMと呼んでいますが,交通を小手先の方法で対処するのではなくて,根源のところから考え直していくという考えです.そこへ1998年の長山先生から市民運動として枚方市でやるということで,私にとって渡りに船と思い勉強させてくださいと入らせていただきました.それで見ていますと,先ほどの貞方さん藤田さんを初めとして,非常に熱心に枚方の足をどうしようかと考えている方がたくさんいました.
前置きはこのくらいにして結論としましては,ちょうどその直後に枚方市の総合計画が始まったわけでございます.私は枚方市とはそれまで社会保健福祉計画とか,都市マスタープランなど色々と繋がりがありまして,市の方から総合計画の依頼を受けた時喜んでさせていただきました.その中でやはり交通に関しては今の自動車交通を是認した現状のままでは何も書けないんですね.基本構想を見てお分かりですが,幹線道路の計画のことが書いてあります.それから渋滞問題も書いてあります.そこまできてその先パタと止まるんですね.それがなぜかと考えていきますと,市民の足をTDMの流れの中で再構築していくという考えがないとどうしようもないということです.このことは委員会でも申しましたし,その中で私は新しくLRTを入れたらどうかと言う考えもはっきりと申し上げました.そんな経緯もありまして,LRTを含めて新しい便利で環境に配慮した乗り物を,つまり新しい時代の交通体系を構築する必要があると書いているわけです.
私は,昨年の交通バリアフリー法の成立に協力してきましたが,そのプロセスの中で,もう一つ出てきたのが,規制緩和と公共交通再構築です.規制緩和に関しては,方針展開の道路運送法改正がこの2月に行われました.従来のバス・鉄道,特にバスに関してはかなり厳しい免許制でやっておりましたけれども,それを緩和して許可制になったわけです.つまり,入ってきたところで必要な条件だけチェックするという考えですね.これはイギリスが1985年に交通法を改正し,同じようなことをやりました.イギリスは徹底してすでに1980年代には議論をしてきているわけです.規制緩和したあとどうするかということですが,これからは自治体が責任を持って地域の交通計画を立てることになります.この仕組みをぜひ枚方市で実現したい.そういう経緯だったと申し上げておきます.
(長山)
ありがとうございます.その努力いただいて,どういうふうに枚方市総合計画の基本計画の中に入ったかが,今日皆様方に総会の議案書と一緒に昨年の5月,総会の時に枚方市長宛てに出しました,「枚方にLRTを実現するための提言」というものを再度印刷してまいりました.この中の提言のポイントに2000年11月に策定された,第4次枚方市総合計画基本計画には,「コミュニティバスシステムとLRT(次世代路面電車)など,便利で環境と人を大切にした新たな時代の交通体系を市民,事業者とともに構想します」という新世紀に向けた政策が,取り入れられておりその新しい時代に即した構想を具体化するために,行政当局が市民,事業者と協議する機関を早急に立ち上げることを提言すると中司市長さんは提言しています.で,おっしゃっていただいた総合計画の中に,このように書き込んでいただいたことは大きな前進であると思います.今後の展望のところでは,こういうことを踏まえて皆様方から色々と意見を伺いたいと思います.
そこで,LRTの問題を議論するにあたって,ただ単にLRTという交通機関を通してそこにLRVを走らせる,それだけを我々は考えているのではなくて先ほどにもありました環境問題ということももちろんですけれども,車からどういうふうに乗り換えてもらうか,交通量をどのように削減するかももちろんですけれども,それと並んでLRTが走ることによって,我々のまちが変わってくるだろうと,どのようなまちを考えながらこの我々の活動を転換したらいいかというところであります.そういう意味でLRTとまちづくりが2つの大きな柱となってくると思いますが,それを強く主張し,まちづくりとの観点でLRTというものをいつも考えていただいているのかが鎌田さんでありますが,鎌田さんご自身がお仕事と関係あるか分かりませんが,そういう自己紹介も含めてまちづくりの観点とLRTについてお話いただけないでしょうか.
(鎌田副代表;以下 鎌田)
大阪府におる時は,都市計画とか面的整備とかやっておりまして,このLRT研究会が発足するということを伺いまして色々議論の方法について提案していた時に,一緒にやったらどうかということで入らせていただきました.ただいま長山先生からお話ございました都市計画あるいはまちづくりとの関連で申しますと,当然のことながら都市の移動手段ということで都市のマスタープランでも中心核が例えば枚方市駅,樟葉,長尾それから藤阪というように設定してそれの核を結ぶ交通を確保するということになっていますけど,当然まちづくりの中心的な機能を担う移動手段ということで必要である.住宅地と市街地の日常と非日常との連絡,これは欠くべからざるものでして,その手段としてLRTというのが,非常に優れているということは,合理性という面で提言でもあげていますように利便性と環境,福祉それからまちの賑わいをもたらすというような面から,優位性があるというのは我々のこの3年間の勉強で明らかになりました.
しかしながら,優位性が分かっていてそれじゃ市民がいっせいにそういう方向に向かっていこうということにはなりません.これがヨーロッパの場合ですと,もちろん外の色々な手段も考えますが,それは非常に環境にとっていいことだと,そういうことを主張する市長さんが通って政策がそっちに向くという,合理性がすぐに行動に移るという社会システムがヨーロッパにはあるように感じました.日本の場合はそれは合理性があることは分かった,しかし日常生活は今まで通りに続くというような体制があると思うんです.それを打破しようと思えば,優位性という精神論プラス,規制そして誘導策の3つをかまして政策を進めていかなければならないと思います.したがって優位性までの勉強とか市民運動はできるんですが,あとの規制と誘導についてはどうしても行政と協力して連携を図っていかないと進まないと,そういう意味でこの総合計画の中に,そのあたりのことがうたわれたことを契機にやはり行政との連携を今後強めていく必要があるんじゃないかと思います.
そこで,これから枚方市も市民も含めて選んでいくとすれば,2つのシナリオが考えられます.一つはこのまま基盤整備をせずに放置しLRTを入れるということで公共交通に切り替えていくというときにここで車をとめるか,少なくとも市の中心部,国道から西,淀川から国道の間,170号の東側,北は天の川あたりで囲まれた区分は車は禁止すると言うことで環境を重視した,公共交通を重視した市であると宣言することによって,理解を求め公共交通中心のまちをつくっていく.そしてもう一つは道路も車も認めて公共交通も認めると,それで一緒に共存していきましょうと言うときには圧倒的に基盤整備が必要であります.路面電車のある都市では必ず4車線プラス歩道の幅員で25mくらいの幅員がありますし.これらの2つのシナリオを選んで市として,こういうまちづくりをするんだと思想をはっきり持つことが大事ではないかと思っております.
(長山)
ありがとうございます.根本的なところで車を規制するか,基盤整備をして道路そのものを広げるかというようなこのどちらかを明確にせざるを得ないというご意見でした.今まで一通りお話いただいたんですけれども,今後の展望とこれからの活動についてお話いただきますが,それぞれにご意見,感想をお持ちだと思いますのでそれを含めながら,お話いただいたらと思います.
ただ単に何もしなければ,今までのままの枚方ということですが,やっぱりこれは藤田さん先ほど言われましたとように外国を見ていると,この枚方の現状はこれでいいのかと,車社会と我々の生活はこれでいいのかといつもおっしゃっておられますように,どこかで公共交通を枚方市にも作り上げていかないといけない.特に枚方の弱いところだと思いますけれどもその辺いかがでしょうか.今後をにらんでよろしくお願いします.
(藤田)
3年程前にヨーロッパに行った話なんですけれども,ご一緒された方もおられるかと思いますが,フライブルクという街に行ったときに大きな何haかの団地を計画しておりまして,その中に家が殆どまだ立っていないんですけれども,学校が建っていまして,主要の駅からLRTがちゃんと敷設されているわけです.周りに住宅が殆ど建っていないのに空き地の中を電車が走っている.学校はある.当然もっと大きな学校用地はあると聞いていたのですが,まちを作るのにまず足を確保してからまちづくりをするという,これは基本的に日本の都市政策やまちづくりと思想が根本的に違うんじゃないかと感じました.私の関係しておりますビオルネの前の道路,わずか歩道5mほど広げるのに何年かかってましたかね.事業決定されてから,15年かかってますね.ちょうど倉紡前から宮之阪のところまで殆ど出来ていますけれども,まだ全部できるには今年度いっぱいかかるということで,それでもまだ早いほうじゃないかなと.しかし初めは片側2車線で4車線できるのかなと思ったら,出来上がってみた計画道路は,やっぱり片側1車線で,まあ歩道はきれいに整備されて広くなりましたけれど,本当に基本的な考え方が間違っているんじゃないかなと.役所はここまで頭が固いのかなというような30年前の枚方市が殆ど車社会というものを想定していないと思うんですよ.それが今やこれだけの車社会になって,なぜもっと計画の変更等柔軟に出来ないのかなと,常々これはどの道路でも同じですが思っております.
幸いこのごろどこの自治体も市民の声を聞くという姿勢になってきていますので,これから大きな期待が持てるんじゃないかと思うんですけれども,今日のLRTの研究会そのものが行政が聞かざるを得ない団体になっていかなければならないなとつくづく思っております.
(長山)
ありがとうございました.都市計画の中でまず交通を考えてということで,今おっしゃったフライブルクのまちづくりは確かにすごいものだと思いますし,それもあそこに先にLRTを引いておかないとそれ無しで大きな住宅地ができるとみな車を使い出すので,まず計画ありきで,そしてどのような将来を見越して何をしていくかということが大きな意味があるということでしょう.残念ながら枚方市は狭い道路がいっぱいでそれを根本から変えていくにはなかなか難しい面もありますけれども,今おっしゃった意味で市民に対してどう働きかけをしていくかということもこのLRT研究会の実現を目指して推進活動をしていく団体としてどうあるべきなのか,そういう点貞方さんいかがですか.将来の展望として.
(貞方)
枚方市の交通行政を総括してみますと,交通対策課の時代に放置自転車の取り締まり条例を作っていまして,この枚方市周辺から放置自転車をきれいに整備しております.ですから,やる気になれば行政もそれなりのことはできると思います.ところが日本でなかなかこのLRTが始まっていかないのは,国土交通省は依然としてLRTを導入したいという市長に対しては,モノレールを進めるという話を聞きます.私が何を言いたいのかといいますと,やっぱり日本の中央集権体制の中で,望むようなLRTを入れていくためには,それなりの条件整備をしていかないとなかなか市長も決断しにくい面があるのではないかと思います.そういう意味で,岡山のRACDAさんが何とか日本ですばらしいLRTを作りたいということで,超党派のLRT研究会を進めているようですが,やはりこのような政治を動かしていくということを,私たち市民運動にも求められているのではないかと思います.
そうすると私たちの市民運動を活発にするためには,やはり大勢の枚方市民のご協力がないと中央に陳情一つかけるにも大変お金もかかりますし,ですから行政の働きかけを強めていくことが求められているのではないかと思います.
(長山)
それはRACDAが中心になって国会議員を動かしたと,そういえるわけですか.そこらへん鎌田さんもよくインターネットで・・・.
(鎌田)
ええ,おそらくRACDAが中心になってやっていると思います.その都度そこの岡さんが,各地の団体に呼びかけて参加するようにメールをいただきます.何回かされていて割と盛況なようで.
(長山)
そうですね.盛んに鎌田さんからメールで送っていただいていたので,注目しているんですが,ここしばらくは会合の情報が入ってこないのが気になってたところですが.で,貞方さん先ほどおっしゃった政治に対してそのように働きかけて効果があがってきていると,だから国会議員の人たちが本人自身も研究会に出ているようですし,代理で秘書が出ている人たちの数もかなりの数に上っておりますね.もう50名ほどに上っているのではないかと思うんですが.そういったものを枚方市でも市会議員の方々に対して働きかけ,そして枚方市という行政機関にも働きかけていくことが好ましい.そのためには市民の多くの幅広い声があがってくることが必要なんだと,こういう趣旨ですか.
(貞方)
民主主義の成熟度みたいなことも考えていかないといけないと思っているのですが,というのも地方自治が始まりましたのは戦後ですから,それなりに今まで戦後の民主主義の中で色々育ってきているとは思うんですけれども,これは歴史の問題もありますので急にどうなる話でもないので,やっぱりこれは民主主義の成熟度だと思います.私たちが,先ほど藤田さんもおっしゃいましたが,ヨーロッパのLRTの視察に行かせていただいた時にヨーロッパの政治の懐の深さみたいなものを感じました.
最近では,NPOの活動が盛んになってまいりましたので,今後は私たちもこのような新しい時代の流れを汲み取りながらこういう運動を作っていくことが求められるんじゃないかと思います.
(長山)
ありがとうございます.このLRTに市民の皆様を巻き込んでいくための手法として,どのようなことを今後考えていくべきか.これは非常に難しい点だと私も思って仕方ありませんが,藤田さんがおっしゃったように実際に体験したらよく分かってこれは必要だと,これを実現したいと.大変重要なことだと認識してもらうことがまず第一番目に必要じゃないかと思います.二番目にはその実現に向かって,一緒に参加してもらうことが必要.そういう形の動機付けをどのようにして市民の方々にできるのかと,これは戦略を考えていかなければならないと思います.
(藤田)
LRT実現に向けて大きく動かすためには,一般市民の方々も望んでいる,市議会議員さんも望んでいるこれがうまく一つにまとめ戦略,手段を考えていけばもっと大きな動きになるんじゃないかと最近は非常にそのように感じております.これをこれから計画していくのが今後の課題じゃないかと思っております.
(長山)
三星さんいかがでしょうか.あなたも行政の方と接していておられると思いますが,行政の人たちにこっちを向いてもらうことは非常に重要な意味を持っていると思うんですね.LRTというものは行政が中心になって,それを推進していかないと出来ない存在ですね.ただ単に民間でバスを走らせるのと根本的に違って,LRTという軌道を敷設したり,その道路という公共の空間を使っていくためには行政がどうしても,中心になってやっていかないといけないと思うんですね.そのあたり行政を巻き込むためにはどうしたらいいと思いますか.
(三星)
市民の話としては,利害要求型の住民運動ではない新しいタイプの参加型の市民運動を作っていくことが重要ですね.それから行政にお願いしたいのは,とにかく検討に着手してほしいということです.企業については,枚方の活性化と併せて先ほどの鎌田さんの話をぜひ市民に広げていって,最後結論になりますが,ぜひ市民の中に体験型の企画をしてほしい.特に視察はこれまでの10〜20人規模でなくもっと大規模なものにするとよいと思います.
この規制緩和の流れのなか,今ごろ基本計画に何も無しで,自動車交通を是認したまま道路計画のまま話が終わっていたら本当に恥といいましょうか.そういう意味ではあの当時の委員さんに敬意を払いますし,あるいはそれを入れた市の当局に深い敬意を払わざるを得ないですね.
(長山)
ありがとうございます.総合計画において,コミュニティバスとLRTと書いてあって,コミュニティバスは導入されたんですね.これは規制緩和で多分あそこによそのバスが入ってこられるのが困るので京阪バスは急いであの2つのルートを作ったんだと思います.そういう意味で規制緩和も大きく動いて市民のある人たちにとって非常に便利な状況を作った.こういうことがいえると思います.
で,新たな時代の交通体系を市民,事業者とともに構想しますと書いてあるのは,行政は市民,事業者の3者で構想するということなんですが,今申しましたあのバスシステムは,京阪バスと枚方市が話し合っている場を作っているんですね.ここの基本計画に書かれているのは,もっと幅広く市民と行政と事業者と一緒に新しい交通システムを考えていきましょうという点で,市民が抜かされていて市民が置き去りにされているといっていいと思うんですが,いかがですか貞方さん.
(貞方)
今年の16回の研究会でのワークショップもかねまして,市内の2つの老人クラブでお話させていただきました.そこでは,先生のおっしゃったコミュニティバスや100円バスをぜひ東部のほうへも延ばしていただきたいという熱い要望を申しておりました.その老人クラブの方々がそのことを市の老人クラブ連合会に持ち出しますと上から抑えられると,我々の要求が通らないとおっしゃっておりました.私も役人をやっておりましたので,デスクの上だけでは交通実態がどのようになっているかなんてつかめないと思うんですね.ですから,いかに市民の方のご意見をお伺いしながら,行政を進めていくという手法がまだ配慮の余地があるんじゃないかと思います.
(長山)
行政の側に問題があるんですかね.行政システムそのものに問題があるんですか.聞こうとはしているがそれは本当に聞こうとしているのか.聞いている振りをしているか.そのあたりどうでしょう.
(貞方)
政策として体系化するということが求められているのではないでしょうか.虫食い的にちょこっと手を出していくというのではなく,枚方市の公共交通をどうしていくんだという体系的なビジョン,何年たってここまで到達するというプログラムがないと.
(長山)
それは研究会自身がそれを話をしながらともに考えていくという場が必要だと,そういうことでしょうか.
(鎌田)
枚方市の行政との連携がこれから大事だと私もさっきから言っているんですが,一度枚方市長にも働きかけたんですが,それ以後実は行っていませんので,やはり頻繁に行くべきではないかと思います.それでこういう交通体系の思想の話といいましょうか.まち
をどのようにしていくかということですので,文書を作って構想の実現をする会を作れとか,交通体系を作るその辺を市民参加でやれとかを申し入れて,それで今度は市長がどう考えるのかということになってくると思います.今年度の活動の課題はその辺のこともあると思います.
(長山)
ありがとうございます.それでは最後になりますが今後の会の課題としてまとめますと,市民参加,行政に向かって働きかけをしていこうということ.私も先ほども申し上げましたように,LRTを実現するためには行政に向かって働きかけをしていくことが重要であり,そのため今後ますます市民の方に的確な働きかけをしていかなければならない.そのためのチャンネルとしてはどういうものを考えていかなければならないのかという課題が残っていると思いますのでそのあたりを見据えて今後推進活動をしていくことが必要であるということですね.
注)会報では座談会の内容を要約して掲載しています
出演者略歴:
長山泰久
大阪大学大学院博士課程修了
大阪大学人間科学部教授をへて、同大学名誉教授
交通科学研究所
大阪府道路交通環境安全推進連絡会議 アドバイザー会議・議長 (財)国際交通安全学会顧問 (財)都市交通問題調査会評議員 等歴任藤田二郎
1998年〜 枚方・LRT研究会副代表就任
(株)ビオルネ代表取締役鎌田徹
京都大学大学院修士課程修了
1967〜2000年,東京都・大阪府・奈良県・滋賀県に在職し,主として道路・都市計画関係に従事.
2000〜現在,ピーシー橋梁(株)
所属団体 枚方・LRT推進会,(NPO)地域デザイン研究会,枚方まちづくり市民会議三星昭宏
名古屋大学大学院工学科修士課程修了
大阪大学工学部助手,近畿大学理工学部講師を経て,同大学教授に.
大阪市交通バリアフリー検討委員会委員長(2002年),土木学会 高齢者・障害者交通研究小委員会委員長,等を務める.
貞方徳憲
1998年〜 枚方・LRT研究会事務局を担当