II 市民を取り巻く4つのバリア

種類

概要と具体例(障害者に関わる問題を中心として)

物理的な
バリア
〔概要〕
道路・公共交通機関・建築物等において、利用者に移動面での困難もたらす物理な障壁のこと。車いす利用者や杖利用者などの歩行困難者、身体機能の低下した高齢者、ベビーカーの利用者、妊婦、内部障害者や難患者等にとって、移動の際の障壁となっている。

〔具体例〕
[道路上のバリア]歩道の段差、路上の放置自転車、電柱、歩道橋、ガードレールで仕切られた狭い歩道等
[公共交通機関のバリア]
乗降口に段差のある車両構造のバス、鉄道・地下鉄などの駅の狭い改札口、ホームまでの階段等
[その他のバリア]
建物の出入り口の段差や回転ドア、車いすに座ったままでは届かない公衆電話や自動販売機、狭い公衆トイレ

制度的な
バリア
〔概 要〕
法令・制度等の存在によって障害者が機会の均等を奪われている構造のこと。能力以前の段階で入学、就職、資格取得等の機会が与えられないというケースをうみだしている。

〔具体例〕
[資格制度・入試制度等のバリア]
資格制度、大学等の入試制度、就職・任用試験等における、障害を理由とした欠格事由等
[その他のバリア]
知的障害者や痴呆性老人に対する禁治産宣告。公営住宅への重度障害者の単身入居制限。視覚障害者が盲導犬と一緒にでは入れないレストラン、スパーマーケット等の施設。

文化・
情報面での
バリア
〔概 要〕
情報を入手する際に困難もたらす構造のこと。情報障害者者といわれる視覚障害者・聴覚障害者、知的障害者等にとって、安全で自立した生活を送る際の障壁になっている。視覚障害者は全盲と弱視者に、聴覚障害者はろう者と難聴者に分けてバリアを考える必要がある。また、中途失明者、中途難聴者の場合のバリも分けて考える必要がある。

〔具体例〕
[視覚障害者にとってのバリア
]一般の人が日常生活の中で専ら視覚に頼っている時計の時刻表示や家電機器の操作、新聞、交差点の信号等の情報、タッチパネル式のATM(現金自動預け払い機)や電化製品等
[聴覚障害者にとってのバリア]
音声言語コミュニケーションにおける困難、字幕の無い放送音。鉄道駅・車内におけるアナウンス情報。音による緊急時の警報・警告等。
[知的障害者にとってのバリア]
分かり難い案内や言葉

意識上の
バリア
〔概 要〕
社会の中にある心の壁のこと。障害のある人が社会参加しようとした時の最も大きな問題となる

〔具体例〕
[無知と無関心による偏見と差別の障害者観]
この障害者観の下では、障害者を社会にとって役に立たない、迷惑な存在とし、好奇ときには嫌悪の目で見ることになる。犯罪を精神障害者と短絡的に結びつける発想、地域の中に障害者施設を建設しようとすると起きる反対運動等
[憐れみ、同情の障害者観]
障害者を庇護すべき存在と考え、優越的な立場から不幸な障害者のための何かをしてあげようとする姿勢。 障害者が人間として当たり前の要求、権利を主張する際の「障害者のくせに」という態度。

出所) 総理府編 『障害者白書 平成7年版』 大蔵省印刷局、1995年、3-12ページを編集・加筆。


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